Written by Hiroko Saito

【確定申告書解説⑤:生命保険料控除】生命保険に加入している方へ…

確定申告

こんにちは、公認会計士/税理士の齊藤寛子です。

そろそろ確定申告が気になる個人事業主の方向けに、お役立ち情報をお届けしています。

先日から「確定申告書」の入力項目の内、「所得控除」について複数回に渡り、詳細解説をお届けしています。

所得税は「売上」から「経費」を引いた「所得」からさらに、一定の要件を満たす「所得控除」の項目を控除した上で、「課税所得」を算出し、そこに所得金額に応じた税率をかけて計算されます。

今日はそんな「所得控除」の中から、5番目の「生命保険料控除」について詳細解説します。

1.生命保険料控除とは?

生命保険料には「一般生命保険料」「個人年金保険料」、そしてH24年度に新設された「介護医療保険料」の3種類があり、最高で12万円まで所得から差し引くことができます。

平成24年1月1日以後に締結した保険契約等に係る保険料と平成23年12月31日以前に締結した保険契約等に係る保険料では、生命保険料控除の取扱いが異なります。

また、保険期間が5年未満の生命保険などの中には、控除の対象とならないものもあります。

そして、控除額の計算は保険料の種類ごとに、それぞれ旧保険料と新保険料で計算が変わってきます。

12月末までに届く保険会社からの通知書には「旧制度 or 新制度」、また上記3種類のどの保険に該当するか分類が記載されていますので、しっかり分類して控除額の計算をしましょう。

2.控除額の計算方法

(1)旧保険料:旧制度の控除額の計算

※H23年12月までに締結した契約で、更新等により新制度になっていないもの

  1. (年額の払込保険料)25,000円以下:(控除額)払込保険料の全額
  2. (年額の払込保険料)25,000円超50,000円以下:(控除額)払込保険料×1/2 + 12,500円
  3. (年額の払込保険料)50,000円超100,000円以下:(控除額)払込保険料×1/4 + 20,000円
  4. (年額の払込保険料)100,000円超:(控除額)50,000円

※払込保険料とは、その年に支払った金額から、その年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた残りの金額を言います。

(2)新保険料:新制度の控除額の計算

※H24年1月1日以後に締結・更新等した契約

  1. (年額の払込保険料)20,000円以下:(控除額)払込保険料の全額
  2. (年額の払込保険料)20,000円超40,000円以下:(控除額)払込保険料×1/2 + 10,000円
  3. (年額の払込保険料)40,000円超80,000円以下:(控除額)払込保険料×1/4 + 20,000円
  4. (年額の払込保険料)80,000円超:(控除額)40,000円

※払込保険料とは、その年に支払った金額から、その年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた残りの金額を言います。

(3)旧契約と新契約の双方に加入している場合の控除額の計算

  1. 一般生命保険料
    ・(旧生命保険料控除の年額の払込保険料)60,000円超:(控除額)(1)で計算した金額(最高5万円)
    ・(旧生命保険料控除の年額の払込保険料)60,000円以下:(控除額)(1)と(2)で計算した金額の合計(最高4万円)
  2. 個人年金保険料
    ・(旧個人年金保険料控除の年額の払込保険料)60,000円超:(控除額)(1)で計算した金額(最高5万円)
    ・(旧個人年金保険料控除の年額の払込保険料)60,000円以下:(控除額)(1)と(2)で計算した金額の合計(最高4万円)

(4)生命保険料控除額まとめ(全体で最高12万円)

  1. 一般生命保険料控除:最高4万円(旧契約のみ適用で最高5万円)
  2. 個人年金保険料控除:最高4万円(旧契約のみ適用で最高5万円)
  3. 介護医療保険料控除:最高4万円

→1.~3.を合計し、最高12万円を限度として、生命保険料控除額とします。

新旧両方ともある方は計算が少し面倒になってしまうと思いますが、freee会計や国税庁の確定申告書作成コーナーを使って確定申告される場合には種類ごとに払込保険料の金額を入力すれば、控除額は自動計算されますので、ご安心ください。

3.年の中途で生命保険契約を解約した場合

年の中途で生命保険契約を解約した場合でも、解約までに支払った保険料について控除を受けることができます。

そして、解約の際に受け取った、解約一時金は原則として「一時所得」となり、支払保険料の金額から控除する必要はありません。

また、解約時に解約一時金とともに、又は解約一時金の支払を受けた後に、受け取る剰余金の分配や割戻金の割戻しの金額は原則として「一時所得」の収入金額に算入しますので、こちらも支払保険料の金額から控除する必要はありません。

4.契約者が自分以外の保険料を支払った場合

配偶者が契約者である生命保険契約について支払った保険料も、自分の生命保険料控除の対象となります。

一定の生命保険契約等で、その保険金等の受取人の全てを、その保険料の払込みをする者又はその配偶者その他の親族とするものであれば、生命保険料控除の対象になりますので、契約者が誰であるかは関係ありません。

5.所得控除に必要な書類

12月末までに保険会社から保険料の「支払証明書」がお手元に届くかと思います。

控除額の計算をした後は、忘れずに申告書に貼付するか、申告書提出時に提示しましょう。

電子申告の方は、申告後なくさないように保管しておきましょう。

6.申告書の記載方法

国税庁の確定申告書作成コーナーで申告する場合の、「生命保険料控除」の入力方法について見ていきます。

(1)所得控除の「生命保険料控除」欄の「入力する」ボタンをクリックします。

(2)真ん中の「入力する」ボタンをクリックします。

(3)適用制度を選択し、保険料の金額を入力します。

①「適用制度の選択」から「旧制度」又は「新制度」のいずれかを選択します。
②実際に支払った保険料の金額を「生命保険料」、「介護保険料」又は「個人年金保険料」のいずれかの欄に入力します。
※保険の契約ごとに1件ずつ入力が必要なため、2件以上ある場合は右下の「続けてもう1件入力」ボタンをクリック、入力が完了した場合は「入力内容の確認」ボタンをクリックします。

(4)入力内容に間違いがないことを確認して、右下の「次へ進む」ボタンをクリックします。

(5)生命保険料控除の計算結果が表示されますので、確認して、右下の「OK」ボタンをクリックします。

(6)「生命保険料控除」欄に正しく数字が反映されていることを確認して完了です!!

▶【国税庁】確定申告書等作成コーナー

「生命保険料控除」ついて、こちらの動画でも解説していますので、ぜひご覧ください。

最後までお読み下さいましてありがとうございます。

以上、「確定申告書解説シリーズ」第5弾として、「生命保険料控除」について簡単に解説させて頂きました。

年に1回の煩わしい確定申告作業の一助になれば幸いです。

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