【青色申告決算書解説シリーズ⑥】旅費交通費とは?
こんにちは、公認会計士/税理士の齊藤寛子です。
そろそろ確定申告が気になる個人事業主の方向けに、お役立ち情報をお届けしています。
先日から「確定申告書」とセットで提出する「青色申告決算書」について複数回に渡り、詳細解説をお届けしています。
今日は【青色申告決算書解説シリーズ】第6弾として、「損益計算書」内に計上される事業経費のうち、4番目の「旅費交通費」について詳細解説します。
1.旅費交通費とは?
旅費交通費とは、業務に必要な交通費、出張手当、宿泊費にかかる支払を言います。
旅費交通費に含まれるものには以下のようなものが挙げられます。
- 通勤手当、定期券、電車代、バス代、タクシー代、UBER(ウーバー)、レンタカー代、カーシェア代、ETC通行料、有料道路通行料、有料駐車場代、コインパーキング、海外出張旅費、空港使用料、出張支度金、出張旅費、出張手当、航空券、宿泊費、滞在費、赴任旅費、転勤旅費、帰省旅費、Suica/PASMOチャージ(旅費で使用した分を計上)等
日本国内で発生する旅費交通費は課税取引に該当しますが、海外出張の際の航空券や海外滞在費は消費税の対象外となりますので、記帳の際には課税区分に注意しましょう。
2.Suica/PASMOの取り扱い
最近はSuicaやPASMO等の交通系ICカードで予めまとめてチャージして移動する方が多いと思います。
チャージの際に領収書ボタンを押して領収書をとっている方も多いと思いますが、残念ながらこのチャージ代金は原則、経費になりません。
SuicaやPasmoはスーパーやコンビニ等、あらゆる場面で使用できるので、チャージ代金が他にも使われる可能性のある場合は、それを即「旅費交通費」として計上することは出来ません。
実際に使用した実績(新宿駅から渋谷駅まで150円とか)に基づいて、旅費を計上することになりますので、ご注意ください。
例外的に、仕事用のSuica/PASMOを用意し、交通費以外の用途で使わないなら、チャージの領収書で経費計上することは許容されると思います。
この点、「これでは1件1件旅費を計上するのが大変では?」と心配される方も多いと思います。
しかし、1件1件計上する必要はありません。
3.旅費の楽々計上方法3つ
旅費を簡単に計上する方法を3つご紹介します。
- 旅費精算書に1ヶ月分の旅費を集計してまとめて計上。
- Suica/PASMOの利用履歴のうち、該当分を集計してまとめて計上。
- ビジネス用のモバイルSuicaを用意して、freeeに口座登録&自動計上。
(1)「旅費精算書」による一括計上
「旅費精算書」を作成して、1ヶ月分の交通費を一括計上すると、どれだけ移動があっても、年に12回の記帳だけで帳簿付けが完了します。
「旅費精算書」はイメージ的にはこのような形のものです。
「旅費精算書」をエクセルで作成しておけば、月ごと、項目ごと(電車、飛行機、宿泊代等分けて管理したい場合)に簡単に集計できます。
帳簿にはまとめて計上すればよいので、こちらの「旅費精算書」を月ごとに作成して、その合計欄の数字をそのまま計上すればOKです。
具体的には、帳簿の摘要欄に「7/1~7/31交通費」と記載し、金額欄には15,038円と記入します。
なお、「旅費交通費」をまとめて計上するのでOKとしても、1ヶ月も何も集計せずにいると、何に使ったものか分からなくなっていってしまいます。
特に移動の多い方は、少なくとも週1回は「旅費精算書」に記入したり、領収書がある場合には、移動経路や何の目的で使用したかなどのメモを残しておくと良いと思います。
(2)Suica/PASMOの利用履歴で一括計上
SuicaやPASMOの利用履歴は、駅の自動券売機で明細を印刷できます。
その利用履歴から事業用に使った旅費だけを集計して、それをまとめて計上することも可能です。
(3)モバイルSuicaを会計freeeで口座登録
会計freeeではモバイルSuicaを口座登録して明細を自動で入手・処理することが可能です。
仮に旅費以外の経費の支払いに使ったり、プライベートで使う場合は、旅費以外の科目や「事業主貸」で処理すればいいので、自分で集計する手間が省けて一番便利な方法です。
少しでも帳簿付けを効率化して、帳簿付けの時間を削減できるといいですね♡
※こちらの動画でも、これら3つの方法を解説しています。
4.出張旅費の取り扱い
出張旅費の精算には①実費精算と、②旅費規程による精算の2つの方法があります。
- 実費精算による方法
その名の通り、実際にかかった金額を領収書等に基づいて精算する方法です。
この場合、必ず、領収書の提出の他に「旅費精算書」を作成してもらい、領収書と「旅費精算書」セットで保管しておきましょう。 - 旅費規程による精算の方法
従業員の方を雇われているケースを想定していますが、あらかじめ日当、宿泊費などを決めておき、それに基づいて精算する方法です。
なお、出張手当に関しては以下の2点に注意しましょう。
- 経費計上できるのは従業員に対してのみです。
- 従業員に高額な「出張手当」や「宿泊費」を支給すると、従業員の方に「所得税」が課せられることがあります。
従業員の出張手当やホテル代については、3千円~1万円程度が妥当とされています。
「ホテル代1万円」「出張手当1日5千円」といった「出張・旅費規程」を作っておくと、税務署からもにらまれることがなく安心です。
また、お仕事で出張された後にプライベートで延泊したり、少し足を延ばしたり…といったこともあるかと思いますが、出張旅費の内、観光など業務に関係ない支払いがあれば、経費としては認められませんので、「事業主貸」(従業員の場合は「給料手当」)として処理しましょう。
5.通勤手当の取り扱い
所得税法上の非課税限度額を超える部分は「給料手当」として処理します。
所得税法上の非課税限度額は電車やバス等の交通機関を利用している場合、1ヶ月15万円(税込)となっています。
ちなみに、電車には新幹線も含まれますが、グリーン料金は認められていません。
また、通勤経路や方法は最も合理的・経済的である必要があり、遠回りしているようなものは認められません。
通常、「給料手当」は消費税がかかりませんが、通勤手当の非課税限度額を超えた部分は課税取引となりますので、該当ある方はご留意ください。
6.接待のタクシー代
忘年会シーズンも終盤に差し掛かっていますが、接待時のタクシー代は自分が接待した側か、接待を受けた側かで計上する科目が変わってきます。
取引先を接待した際に取引先の送迎及び個人事業主・従業員が移動に使うタクシー代は「旅費交通費」ではなく、「接待交際費」となります。
一方、取引先に接待された時に個人事業主・従業員が移動にタクシーを利用した場合、「旅費交通費」となります。
コロナ禍で移動も減りましたが、旅費交通費は日々発生する方も多いと思いますので、効率的、かつ正しく処理して頂けたらと思います。
※「旅費交通費」について、こちらの動画でも解説していますので、ぜひご覧ください。
最後までお読み下さいましてありがとうございます。
以上、「青色申告決算書解説シリーズ」第6弾として、「旅費交通費」について簡単に解説させて頂きました。
年に1回の煩わしい確定申告作業の一助になれば幸いです。
なお、「ご自身で帳簿付けや確定申告書を作成するのが大変」という方向けに、記帳代行&確定申告書作成代行のサービスをご提供しております。
初回60分まで無料にてご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。